商品説明
メランコリーと建築ーアルド・ロッシ
Melancholy and Architecture on Aldo Rossi
著者名=[原著]ディオゴ・セイシャス・ロペス/
[翻訳]服部さおり、佐伯達也/[監修]片桐悠自
発行所=フリックスタジオ
編集=フリックスタジオ
デザイン=岡﨑真理子(REFLECTA, Inc.)、小林すみれ
判型=四六判
頁数=270
言語=日本語
発行年月=2023年3月
本体価格=2,273円
ISBN=978-4-904894-59-0
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アルド・ロッシ研究の決定版 待望の翻訳本!
「ロッシの今日における詩性を見事に捉えた〈メランコリー〉という用語を、歴史を遡って探査する」――ポルトガルの建築家ディオゴ・セイシャス・ロペス(1972-2016)による、ポストモダニズム以降の建築に新たな視点を投げかける建築論。〈メランコリー〉と建築の連関を通じて、20世紀でもっとも重要な建築家・建築理論家のひとりであるアルド・ロッシに再び光を当てる。
本書は、著者がスイス連邦工科大学チューリッヒ校で執筆した博士論文をもとに、2015年に英語版が書籍化された。2019年にはポルトガル語版が刊行され、国際的な注目を集めており、なかでも建築史家ケネス・フランプトンは「我々のロッシに対する理解を変容させる、非常に繊細で洗練された研究」と評価している。
ロッシのキャリアの全容を辿り、熱狂と幻滅の間を揺れ動く建築家としての生を、代表作「サン・カタルドの墓地」が表象する詩性のなかで描き出す。さらに作品に反響する参照の数々――ジョルジョ・デ・キリコの形而上学的な眼差し、アドルフ・ロースの文化的懐疑論、エティエンヌ=ルイ・ブレの高揚した合理主義、アルブレヒト・デューラーの視覚的迷宮――や、タイポロジーや類推による形態の生成過程を解き明かしていく。
「建築理論と実践を結びつける」という著者の言葉が示すように、現代の建築家にとっての手がかりとなる一冊である。
[目次]
序論
今となっては失われた/不完全さについてのありふれた感情
第一章 メランコリーと建築
近代性、不安、空間/崇高の美学/大都市と憂鬱/中心の喪失/鬱屈した建築
第二章 アルド・ロッシの場合
戦後の時代/あるリアリズム教育/連続性か、危機か/選択としての建築/記憶としての建築/自伝としての建築/政治と詩学
第三章 サン・カタルドの墓地
文化の徴し/設計競技の一次審査/設計競技の二次審査/計画と建設/死者たちの家/打ち捨てられた家/骨格の形/影の建築/メメント・モリ
結論
オプティミズムの建築?/文化と危機/結びにかえて同上
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[著者略歴]
【原著】
ディオゴ・セイシャス・ロペス|Diogo Seixas Lopes(1972–2016)
1972年リスボンに生まれる。1996年にリスボン大学建築学科卒業、2013年にスイス連邦工科大学チューリッヒ校にて博士号取得。2006年にはBarbas Lopes Arquitectosを共同設立。代表作に「タリア劇場の改修」(2016)がある。カナダのカールトン大学(2013, 2015–2016)とポルトガルのコインブラ大学(2011–2013)にて客員教授を務めた。
ロペスの建築家としてのキャリアの背景には、リスボンの文化的ダイナミクスと多くの仲間の輪の中で培われた文化人としての活動がある。1996年に大学を卒業した後、彼は週刊新聞『Já』にて音楽評論を担当しはじめる。続いて1997–1998年に仲間と刊行した週刊誌『Alice(華々しい活動へのガイド)』では、テーブルサッカーから前衛芸術に至る多様なトピックをユーモアを交えながら採り上げ、1999–2001年は月刊誌『Première』で映画批評を執筆した。
また、それらに先行して80年代から90年代にかけては友人達と数々のバンド・デシネ(Banda Desenahada)を制作し、90年代から2000年代には映画監督の父フェルナンド・ロペスとの協働を通じて映画制作にも携わった(ロペスは助監督や脚本家を務め、ジャーナリストであった母マリア・ホワオ・セイシャスと共同で脚本を担当することもあった)。本書で採り上げたアルド・ロッシの「サン・カタルドの墓地」の写真を撮影したヌノ・セラとともに、この時期に映画脚本も書き上げている。2003年にはセラとリスボン近郊の風景を捉えた『Cimêncio (Fenda Edições, 2001)』を出版している。
1999年には、パウロ・セロディオとともに建築雑誌『Prototypo』を創刊する。2004年までに9巻を刊行し、ロペスは編集者として活動の幅を広げ、ポルトガルの建築文化を牽引する存在のひとりとなっていく。同時期から建築雑誌『Jornal Arquitectos』にも寄稿し、2013年から2015年にかけてはアンドレ・タヴァーレスとともに編集長を務めた。2016年のリスボン建築トリエンナーレでは、「Form of Form」をテーマに、タヴァーレスとともにチーフ・キュレーターを務めた。ジャンルを超えて、あらゆるコラボレーションのうちに展開したロペスの活動については、タヴァーレスの主宰する出版社Dafne Editoraより『Arquivo: Diogo Seixas Lopes (Diogo Seixas Lopes, André Tavares, Porto, Dafne Editora, 2019) 』として纏めたアーカイブ本が出版されている。
2006年にパトリシア・バルバスとの建築設計事務所の設立以降は、公共建築、戸建住宅、展示計画、内装計画など幅広い仕事を手掛ける。ペーター・メルクリ、ゴンサロ・ビルネといった建築家との協働も行った。学問領域としての理論と職能としての実践をつなぐ建築との関わりを試行するなかで、2013年にスイス連邦工科大学チューリッヒ校建築理論・建築史研究所(gta Archives ETH Zurich)でヴィットリオ・ランプニャーニの主査のもと、博士論文を完成させる。この論文が元となって出版されたのが『Melancholy and Architecture: On Aldo Rossi (Zurich, Park Books, 2015) 』である。2016年にはOrfeu Negro社よりポルトガル語版が出版され、AICA(美術批評家国際協会)の2等を受賞した。
【翻訳】
服部さおり|Saori Hattori
Schenk Hattoriパートナー。1991年神奈川生まれ。2014年に慶應義塾大学法学部政治学科卒業。2016年に早稲田大学芸術学校卒業後、スイス連邦工科大学チューリッヒ校建築学専攻留学、Caruso St John Architects(チューリッヒ)でのインターンを経て、2019年に東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程を修了。現職に至る。
佐伯達也|Tatsuya Saeki
Gensler and Associates勤務。1989年愛知生まれ。2014年に京都造形芸術大学芸術学部通信教育部建築デザイン専攻卒業後、KU Leuven Campus Sint-Lucas Brussels交換留学、Barbas Lopes Arquitectosでのインターンを経て、2018年に東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程を修了。現職に至る。
【監修】
片桐悠自|Yuji Katagiri
東京都市大学建築都市デザイン学部建築学科講師、博士(工学)。1989年東京生まれ。2012年に東京大学工学部建築学科卒業。フランス国立パリ・ラヴィレット建築大学留学を経て、2017年に東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程を修了、同年東京理科大学理工学部建築学科助教に就任。2021年より現職。